ぶらた
字書きサイト 更新停止 →pixivへお引っ越しします。
物心ついたぐらいだろうか。
私は時々ほんの僅かな時間不思議な夢を見ることに気がついた。
そう、それは夢なのだ。
目覚めれば霧散してしまうようなとりとめのない夢。
だけど私は知ってしまった。
それが、人間が夢だと言う現象とかけ離れている事だと。
なぜなら・・・
私が見る夢は全て現実。
真夜中に見る夢は過去。
明け方に見る夢は現在。
では
真昼に見る夢は?
よく私は何もない空間を見ることがある。
誰も居ない何もない、そんな場所を。
実際そこには何もないのだ。
あるのは私の頭の中。
脳味噌の端っこの方だろう、良くは分からないが。
視界を閉じた瞬間白い光が私の目の前を通過していく。
笑顔だったり、怒り顔だったり、泣き顔だったり。
映像。
一番わかりやすくかつ具体的だと思う。
でも耳を傾けると映像に加えて音も聞こえてくる。
たいていの場合は意味のない生活音。
電車の通る音、車のクラクション、水の流れる音。
ほんとうにとりとめのないこと。
可笑しなぐらい普通の出来事。
だから私はそれを夢だと思えた。
何が原因だったのだろう。
今でも余りよく思い出せない。
キーという音とドンという音ドサッという音。
スピードを上げる車とぶつかる身体とコンクリートを染める赤。
それだけ。
それで私のクラスに空席が一つ出来た。
理解できない出来事はまだ続く。
「ねぇ、なんで泣いてるの?」
唐突にクリアに聞こえた声。
後ろに立つ同級生の言葉。
その子は不思議そうに私に問いかける。
空は青く。
どこまでもどこまでも青く。
彼女の声は不思議なぐらいよく響いた。
「ねぇ、なんで泣いてるの?」
気がつくとそこは教室で。
黒板にはチョーク音が響いていた。
反芻する。
今のは何だったのかを。
当時の私には難解すぎる断片。
そのことに気が付けなかった。
幼さを。
私は今も思い出す。
今ならはっきりと分かる。
あれは私がこれから見る未来。
一字一句、映像に乱れなく、そのままそっくりたどる結末。
数日後。
クラスメートの一人が私の目の前で車にひかれる。
空席が出来る。
そして
私はクラスメートの一人として葬式に参列する。
泣き叫ぶ女性。
その人が母親だと誰かが言った。
挨拶をする男性の肩は傍目から分かるほど震えていた。
私の目から零れる滴。
「ねぇ、なんで泣いてるの?」
夢と同じ台詞。
振り向くと彼女は不思議そうにこちらを見てる。
私は言う。
「なんで・・・泣かないの?」
彼女は答える。
「だって私好きじゃなかったもん」
息が詰まる。
私は好きだっただろうか。
好き・・・そういう感情かと言われれば未だに悩む。
「私は嫌いじゃなかったよ」
そう、それが私のその時の答え。
この答えが
後の、私の行動の原点なのだろう。
「墓石を作りたいのですが」
ここらでは見ない顔であったが、ここいらではよく見る表情だった。
なにもかも知ったうえで買いに来る客。
あぁ、こんなに若いのに気の毒なこって・・・
「難しいですかね」
柔らかい笑顔だった。
あきらめて乾ききった魂がそれでも見せる幻想だろうな・・・
「いや、切り出した石なら簡単だ」
青年の言葉に男は事務的に返答する。
「本当ですか、たすかります」
その言葉の通り、タスケラレルなら良いのにな。若いの―自殺者―
依頼人の望むままに仕事をこなす男には青年にかける言葉がない。
言葉があったとしても青年には決して伝わらない。
だから、男は言葉を飲みこむ。
飲み込んだ言葉が男をむしばむその日まで。
ここらでは見ない顔であったが、ここいらではよく見る表情だった。
なにもかも知ったうえで買いに来る客。
あぁ、こんなに若いのに気の毒なこって・・・
「難しいですかね」
柔らかい笑顔だった。
あきらめて乾ききった魂がそれでも見せる幻想だろうな・・・
「いや、切り出した石なら簡単だ」
青年の言葉に男は事務的に返答する。
「本当ですか、たすかります」
その言葉の通り、タスケラレルなら良いのにな。若いの―自殺者―
依頼人の望むままに仕事をこなす男には青年にかける言葉がない。
言葉があったとしても青年には決して伝わらない。
だから、男は言葉を飲みこむ。
飲み込んだ言葉が男をむしばむその日まで。
ヒトは冷たい・・・
けれど
死体はもっと冷たい。
僕の望みはね
この空の下、冷たくなってしまうこと。
ヒトは暑すぎて、雪が降れたくらいでは負けて水になってしまう。
だから
体温が凍るぐらい冷めてしまいたいんだ。
ねぇ・・・お願いだから、邪魔しないで。
―――白いコートを翻し彼は消えた。
必死の山狩りもむなしく彼は望み通りとなった。
それは
あっけないほどの幕引き。
潔すぎるぐらい彼は何の未練なくこの世に別れを告げた。
彼は墓石を大切に抱え込むようにして亡くなった。
死に顔は夢見るように柔らかな微笑みを浮かべていた。
“1998年2月29日 ××××× 罪と共に眠る”
「やつは、本当に最期まで嘘をついていきやがる。
なにが殺しただ。なら、なんで○○○の誕生日を選んだんだよぉぉぉぉぉ」
胸を打つ慟哭。
されど
聞かせる相手は土の中。
全ては彼の望みどおりに運ぶ。
予告された未来すら、彼の前では跪き、閉幕のベルをただ無気力に告げた。
けれど
死体はもっと冷たい。
僕の望みはね
この空の下、冷たくなってしまうこと。
ヒトは暑すぎて、雪が降れたくらいでは負けて水になってしまう。
だから
体温が凍るぐらい冷めてしまいたいんだ。
ねぇ・・・お願いだから、邪魔しないで。
―――白いコートを翻し彼は消えた。
必死の山狩りもむなしく彼は望み通りとなった。
それは
あっけないほどの幕引き。
潔すぎるぐらい彼は何の未練なくこの世に別れを告げた。
彼は墓石を大切に抱え込むようにして亡くなった。
死に顔は夢見るように柔らかな微笑みを浮かべていた。
“1998年2月29日 ××××× 罪と共に眠る”
「やつは、本当に最期まで嘘をついていきやがる。
なにが殺しただ。なら、なんで○○○の誕生日を選んだんだよぉぉぉぉぉ」
胸を打つ慟哭。
されど
聞かせる相手は土の中。
全ては彼の望みどおりに運ぶ。
予告された未来すら、彼の前では跪き、閉幕のベルをただ無気力に告げた。


