ぶらた
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「美味しい」
問いかけに答える人物の表情はとても幸せそうである。
某アイス会社のアイスチョコレート。
それを公園のベンチで食べている。
片方のみが。
もう片方は食べている姿をニコニコと見ているだけでいっこうに食べる様子はない。
「なぁ、璃縁食べないのか?」
アイスチョコレートは一つではない。
二つ買ったうちの一つは今食べられているがもう一つは未だ袋の中。
いまかいまかと出番をうかがっているのだが璃縁に食べられるご様子はない。
「私はお家で食べてきたのでもう一つどうぞv」
「さんきゅー」
嬉しそうに袋から取り出す。
いつのまにか手に持っていたアイスチョコレートは空になっていてベンチの端によせてある。
それを何気ない動作で璃縁は空の袋に入れ軽く縛る。
隣を見ると、いそいそと二つ目のアイスカップを空けている。
頬にはチョコがついている。
夢中で食べていて気づかなかいのだろう。
そして
二つ目を食べている。
その無謀な姿に悪戯心がくすぐられる。
「兎衣さん」
「んっ?」
こちらを見た瞬間頬に舌をはわせる。
「ごちそうさまでした」
「・・・」
「どうなさました?
手止まってますよ」
「い、いま何・・・した」
ギギギ-
鋼鉄で出来たブリキの人形が無理矢理首を動かせばなりそうな、いたく不自然な動作でこちらをみる兎衣。
「せっかくですから、
バレンタインのチョコいただきました」
「バレンタイン!?」
「ご存じ無かったんですか?今日バレンタインですよ」
意味ありげに笑う璃縁の姿に兎衣は言葉を失った。
バス停前で俺は告白された。
自慢じゃないが告白をされたのは初めてではない。
「あのー勘違いしてると思うけど・・・」
「ずっと見てました。
貴方が毎朝アニソン聞きながら感動しているのも、毎月発売の花と夢を鞄に入れているのも、実はピンクのフリルに憧れているのも!!」
周りの視線が痛い。
自分で言うのも何だが外見はテレビの俳優が霞むぐらい整っている。
つまりは男前。
そんなやつが乙女チックな趣味だと知れば誰だって不審な顔をするだろう。
ああ、周りの視線がすんごく痛い。
「キミには悪いけど、つき合えないよ」
ピンクのフリルに囲まれたまるで西洋人形のような彼女の瞳は零れそうなほど見開かれた。
うー良心が痛む。
けど、勘違いした彼女も悪いんだ。
「私、貴方の好みじゃないですか?」
彼女は肩をふるわせながらそう呟いた。
すけるような白い肌、日本人ではあり得ない色素の薄い瞳、鈴を転がすような流麗な声。
どこをとってもパーフェクト!!
好みじゃないどころかストライクゾーン。
まさに理想の・・・。
「そうじゃなくって俺とキミとじゃつき合えないよ」
周りの視線、特に男共の視線が突き刺さる。
こんな美少女をフルなんてなんてもったいないことをしているのだと。
そんな視線よこすぐらいならお前らつき合ってやれと言いたい。
お前らなら問題ないだろうしな。
「私あきらめません。」
「俺はキミとはつき合えないって!!」
「私もっと綺麗になって貴方にプロポーズします」
「そもそも結婚出来ないって!!」
「こないだ18歳になられたでしょ?全然余裕ですから」
どうして知ってるんだ。
俺と彼女との接点はバスの中ですれ違う程度だぞ。
前のは注意して見てれば分かることだが、誕生日なんてどこで調べたんだ。
なんかヤバイよ、この子。
「俺はね。
普通の恋愛して普通の結婚するのが夢なの!!」
腐っても、俺は人間でいたい。
たとえ相手がどんなのでも俺は良いのだ。
このさい容姿はどうだっていい。
「知ってます。
絶対後悔させませんから私とつき合ってください」
彼女は見た目の儚げさを裏切って凄く熱意がある。
ナイスファイト!!
って応援してる場合じゃないじゃん。
「キミが後悔するって。
俺はこう見えても・・・」
そうだった。
これを知れば彼女もきっと考え直すだろう。
ついつい、言いそびれた言葉を言おうとすると彼女はニコリと笑った。
その笑顔に言葉が止まる。
「絶対幸せにして見せます」
本当に神様は意地悪だ。
この子の泣き顔なんて見たくないのにあんまりだ。
だけど、誤解は解かなきゃいけないよね?
「あのな、俺なりはこんなだけど性別“女”だよ」
とうとう言っちゃった。
泣くか?
泣くか?
泣くなよ?
俺はキミを泣かせたい訳じゃないんだよぉぉぉぉぉ
「ええ、とっても素敵ですよね♪」
「へっ?」
「そんなところが好みなんですっ」
この子は今はやりのレズというやつか?
いや、待て。
見た目は男女だからそうでもないのか、でも性別面があるからして、いやなんたらほいさっさ。
頭の機能は混乱しまくった。
「そんな貴方に釣り合うよう私努力します」
「努力って?」
こうなれば自棄だ。
世の中物好きはいるんだ。
若いうちはいろんな事を知っても良いじゃないかキミのことも知ってみよう。
「美白とかサウナとか化粧とかetc」
「お金大変じゃない?」
俺のためにそんな使ってくれるのは嬉しいんだか悲しいんだか。
「大丈夫です。私、病院の跡取り息子ですから」
そうか跡取り息子なんだ。
それなら治療費はないも同然だね。
キミ賢いじゃん。
ってあれー?
「今なんておっしゃいました?」
聞き間違いか。
いくら何でもこの子に失礼な聞き間違いだな。
「父が医院長ですの」
そこは分かってる。
問題はその前だ。
「じゃなくて、今息子って」
「はい♪私長男なんです」
誰か嘘だと言ってくれ!!
こんな世の中間違いまくってるーーー!!!!!
俺たちはその日交際した。
翌年にはめでたく結婚。
世の中理想通りにはいかないが理想なみに良い未来もあるさ。
そう悟る新妻の俺。
翌日の朝刊
大富豪
○株式会社森ヶ丘コーポレイション社長 森ヶ丘北斗・桃香ご夫妻
ご令嬢・ご子息・誘拐される
長女 彩香 十ニ歳
長男 緑斗 十歳
次男 雪斗 六歳
犯人は若い男
○株式会社東洋電子工業専務刺殺
犯人は若い男
共犯は若い女
監視カメラの映像によると
男が使用している車は同一である。
複数犯である可能性が高く
警察は男が使用している車の手がかりを求めている。
「へぇ~若い女ね・・・
確かに私若いわよ」
新聞を読み女は言った。
「十ニのガキが何言ってるんだ!!」
訂正:幼い女の子は言った。
「なによ~!!
あそこで捕まってたら誘拐罪と無実の殺人で速攻刑務所送りよ。
感謝されることはあってもそういう口の利きかたされる覚えなんてないわよ。」
小六女子とは思えない言葉に男は黙った。
というか黙らざるおえない。
女の子、彩香の言葉はどこまでも正論だったからだ。
「ところで誘拐犯さんお腹すいたんだけど」
「アキトだ。誘拐犯なんて人聞き悪いから使うな!!」
人聞きを気にするなら初めからやらなければいいのにと彩香は思った。
でも、事情ってやつよねと鷹揚に彩香は心の中で頷いた。
「どんな字書くの?」
「明るいに人間の人だ」
「人生裏街道走ってるのにね~」
「五月蝿い。お前はどうしてそうも口が立つんだよ」
「長いこと人間やってると自然と覚えるってもんよ」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
見詰め合うふたり。
お互いがお互いの出方を伺う。
「私、彩香って名前だけどみんな彩って呼ぶの。
アキちゃんも彩って呼んでよいよ。」
「おい、アキちゃんって何だ?」
「弟も短く緑と雪って呼んでくれてかまわないわ。」
「無視かよ・・・」
両肩を叩かれる。
弟たちは何時の間にか左右におりうな垂れる明人の肩を叩いた。
「おまえたちいい奴だな」
姉である彩香の仕打ちに凹んでいた明人は思わず呟いた。
緑「これぐらいでめげてたらこの先生きてけないぜ」
雪「虐めに負けちゃ駄目だよ!!」
明人はその言葉に更に凹んだ。
生きるって何?
虐めって何?
最近の若い子ってこんななのか?
俺の人生どこで間違っちゃったんだろう・・・。
自分のしでかした事を棚に上げ明人の考えは深層を彷徨っていた。
そんな事はしったこっちゃない森ヶ丘三姉弟は今朝の朝食について熱く語り始めた。
彩「秋ちゃん、ビンボーそうだから高いのは払えないと思うの」
緑「おねえー俺CMで見るマク○ナルドに言ってみたい」
雪「ボク、一度でよいからミス○のお粥食べてみたかったんだ」
彩「そうね。値段的にもファーストフードは妥当な線よね。
安い早い便利という三原則は私たちにとって未知の領域ね」
深層を彷徨っていた明人の精神はどうやらファーストフードというところで落ち着きそうな朝食会議の結論に反応した。
「全部却下だ。朝食は決まってる」
「「「ええ~~~」」」
三人は不満そうな顔をする。
それではいったい自分たちは何の為に熱きバトルを繰り広げたのか分からないのではないか。
視線は時として言葉より雄弁に心に響く。
が、明人には拘りが合った。
朝食というのは一日の活動原である。
昼食夕食は抜きにしても朝食は食べるものだ。
明人のこの考えは幼少期の家庭環境にありそれはおいおい物語では重要になっていくが今回は長いので割愛。
「文句は食べたから言え」
明人はそう言い台所に向かった。
居間に残された三人は炬燵の中に入りほお杖をつきながら小声で喋る。
縁「おねえーなんで逃げない?」
彩「それは言わないお約束でしょ」
雪「僕お約束してないよ」
彩「忘れただけでしてるのよ」
雪「そうか。ごめんねーお姉ちゃん」
縁「おいぃ。騙すなよ、そんで騙されるなよ雪」
彩「まぁv冗談は半分にして
これからどうしよっか~、世間じゃ私たち誘拐されてるみたいだし」
縁「妥当なところは家に帰る、だな」
雪「うん」
彩「あんたたち帰りたい?」
「「・・・・・・」」
弟たちはお互い見つめあい苦笑する。
彩「そうなのよねー。ここは普通のお子さんなら
お家に帰して、ママとパパに会いたいー、みたいな可愛い事言って
泣いちゃう所なのよ」
緑「泣いても良いよ、おねえー」
彩「あんたたち私らがそこいらにおられる普通のお子さんに思うの」
雪「思わない」
彩「そうでしょ、今だって年に数回、酷いと丸々一年会わない親なんてそうそういないわよ。
しかも親の代わりに各地に連れまわされる生活なんてもうウンザリ」
ぱちぱちぱちぱち
弟たちは賛成の意を評し手を叩く。
彩「もうちょっとだけ、この生活楽しみましょ♪
子供らしく後先考えずに」
雪「賛成!!」
緑「意義なーし」
彩「では、ここに。
アキちゃんによるドキドキ愛の逃走線をお送りいたします」
盛り上がる三姉弟。
その明るい声を障子越しに聞きつつ明人は思った。
なんか違くねーか。
誘拐ってこう、お通夜みたいで、暗いものってイメージあるのに
何だって俺は自宅の台所であいつらの朝食を作ってるんだ。
明人はどんどんずれていく現実とのギャップに戸惑っていた。
まぁーいいか。
これ以上考えるとドツボにはまりそうなので明人は思考をいったん停止して
朝食作業に没頭した。
私十二歳小六女子
弟十歳児小四男子
弟六歳児小一男子
ちなみに私たちの親は大金持ちらしい。
今日も車で連れて行かれる。
なんたらのお披露目会という名目だ。
めんどいことだ。
こんな一桁の時代から義務やお愛想をつかわなあかんなんてなんとも嘆かわしい。
仕方ない、親にも面子があり、うちらは育てて貰っている身分だ。
不平不満はなるべく我慢しよう。
夜の11時。
運転手が煙草を吸いに外に出た。
その様子をぼんやり見ながら両隣を見ると弟達はもう寝ている。
疲れたのだろう。
いつもより長い時間うろうろさせられたのだから。
私も疲れていたのだがなんとなく眠れず窓の外を見てた。
運転手に近寄る影。
細い棒のようなモノで背を強打。
運転手が崩れ落ちる。
背広から何かを抜き取り真っ直ぐこちらにむかってくる。
ドラマであるなこうゆうの。
とりあえず弟たちに見習い寝たふりをする。
ドアが開く音。
車はすぐに発進される。
薄目を開けるとどうやら若い男のようだ。
遠ざかる窓ごしに運転手が走っている姿が見えた。
怪我は大したこと無いらしい。
さて、これからどうしよう。
「ねぇ、誘拐犯さん」
「!?」
男の方が揺れた。
面白い。
男は意外と小心者のようだ。
「何が目的なの?」
「・・・寝てたんじゃなかったのか」
男の声はとても耳に心地よい音だった。
「今、起きたの」
「そうか。」
男は納得したらしい。
まさか最初から起きてたなんて思わないようだ。
「私たちどこに行くの?」
「・・・遠いところ」
数瞬、男は黙り、答えが返ってくる。
その答えが予想外に正直なので嬉しくなる。
「身代金は最低1億円は要求してねv」
「はぁ?」
男は驚いたようだ。
でも身代金ならそれぐらいは欲しい。
低いと自分の価値が低いと思われるじゃない。
「後、弟達には危害加えちゃイヤよ。
私なら一番長生きしてるし別にかまわないけれど。」
下の子は六歳だ。
どう考えても死ぬには早いだろう。
その点は私は六年も余分に生きている。
ま、短いけれどこれも人生だ。
割と楽しかった。
「殺すつもりはないから安心しろ」
男は少し疲れた声で答えた。
うぬ、意外とナイーブっぽいよこの人。
「とにかく、当分着かないから寝ろ。」
バサッと何かが降ってくる。
男が消えていた黒いジャケット。
「子供は子供らしく丸まってねとけ」
言葉通りジャケットを三人で使いわたしは寝た。
「変わったガキだ」
眠りにつく直前そんな声が聞こえた。
起きると車は止まっていた。
男の姿は見えない。
ドラマで言うチャンスという奴だろうか。
弟たちを起こす。
ぶーたれながらも起きる二人。
「おねー。もう着いたの?」
「眠たいよぅ」
文句を言う。
「しっ。私たち誘拐されたの。
犯人は居ないみたいだから逃げるわよ。」
沈黙。
「マジ?」
「嘘だよねぇ」
小さな声で呟く。
「大マジ。行くわよ」
ドアを開ける。
ここは駐車場のようだ。
言い争う男の声が聞こえた。
とにかく近づく。
男の場所を把握しなければ逃げようがない。
『お前なんて死ね』
『なにを・・・』
『ぐわぁぁぁぁあああ』
二つの影が重なり離れる。
息を潜め車の影で見た惨劇。
二つの方が震える。
銀色の刃が男の身体に突き刺さっている。
どちらも私たちを誘拐した男ではない。
加害者の男はそのまま足早に去る。
姿が見えなくなってから私たちはようやく詰めていた息を吐き出した。
「どうしよう。おねぇ?」
「とにかく警察」
「うぁぁぁあぁあああああああぁああああ」
悲鳴が上がる。
それは私たちを誘拐した男の声だった。
男は手にコンビニの袋を持っている。
-ボサッ
あ、落とした。
パニクっているのは遠目からでもはっきりと分かった。
「どうした?」
その声に駐車場の警備員が駆け寄る。
「人殺し!!!」
警備員は倒れている男を見てそして叫ぶ。
「違う、俺じゃない!」
誤解を解こうとする男。
しかしその様子はどう見ても怪しい。
黒い服に黒いシャツ黒いサングラス。
全身黒づくめ。
このままでは男は無実の罪に問われてしまう。
「袋を拾って。こっちに来て!!」
思わず隠れていた所から飛び出す。
「「「おねぇ」」
ごめん。弟どもよ。
巻き込んじゃうけどお前達の安全は保証するから良いよねv
「え?」
間の抜けた男の声。
「早く。捕まりたいの?」
捕まるの言葉に男は落ちた袋を拾い走る。
「待て!!」
あわてて追いかけてくる警備員。
「後ろに乗る!!」
弟たちに声を掛け私たちは後部座席に座る。
男は乗り込みエンジンをかける。
近づいてくる警備員。
「早く」
「ああ」
走り出す車。
とんでもないことに巻き込まれた私たち。
さて。
私たちはこれからどこへ行くのだろう。
物心ついたぐらいだろうか。
私は時々ほんの僅かな時間不思議な夢を見ることに気がついた。
そう、それは夢なのだ。
目覚めれば霧散してしまうようなとりとめのない夢。
だけど私は知ってしまった。
それが、人間が夢だと言う現象とかけ離れている事だと。
なぜなら・・・
私が見る夢は全て現実。
真夜中に見る夢は過去。
明け方に見る夢は現在。
では
真昼に見る夢は?
よく私は何もない空間を見ることがある。
誰も居ない何もない、そんな場所を。
実際そこには何もないのだ。
あるのは私の頭の中。
脳味噌の端っこの方だろう、良くは分からないが。
視界を閉じた瞬間白い光が私の目の前を通過していく。
笑顔だったり、怒り顔だったり、泣き顔だったり。
映像。
一番わかりやすくかつ具体的だと思う。
でも耳を傾けると映像に加えて音も聞こえてくる。
たいていの場合は意味のない生活音。
電車の通る音、車のクラクション、水の流れる音。
ほんとうにとりとめのないこと。
可笑しなぐらい普通の出来事。
だから私はそれを夢だと思えた。
何が原因だったのだろう。
今でも余りよく思い出せない。
キーという音とドンという音ドサッという音。
スピードを上げる車とぶつかる身体とコンクリートを染める赤。
それだけ。
それで私のクラスに空席が一つ出来た。
理解できない出来事はまだ続く。
「ねぇ、なんで泣いてるの?」
唐突にクリアに聞こえた声。
後ろに立つ同級生の言葉。
その子は不思議そうに私に問いかける。
空は青く。
どこまでもどこまでも青く。
彼女の声は不思議なぐらいよく響いた。
「ねぇ、なんで泣いてるの?」
気がつくとそこは教室で。
黒板にはチョーク音が響いていた。
反芻する。
今のは何だったのかを。
当時の私には難解すぎる断片。
そのことに気が付けなかった。
幼さを。
私は今も思い出す。
今ならはっきりと分かる。
あれは私がこれから見る未来。
一字一句、映像に乱れなく、そのままそっくりたどる結末。
数日後。
クラスメートの一人が私の目の前で車にひかれる。
空席が出来る。
そして
私はクラスメートの一人として葬式に参列する。
泣き叫ぶ女性。
その人が母親だと誰かが言った。
挨拶をする男性の肩は傍目から分かるほど震えていた。
私の目から零れる滴。
「ねぇ、なんで泣いてるの?」
夢と同じ台詞。
振り向くと彼女は不思議そうにこちらを見てる。
私は言う。
「なんで・・・泣かないの?」
彼女は答える。
「だって私好きじゃなかったもん」
息が詰まる。
私は好きだっただろうか。
好き・・・そういう感情かと言われれば未だに悩む。
「私は嫌いじゃなかったよ」
そう、それが私のその時の答え。
この答えが
後の、私の行動の原点なのだろう。


