ぶらた
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■人と月は生まれながらにして密接な関係を持つ■
それはあまりに突然だった。
ずっとずっと昔から隣で笑っていた親友の手が私を捕らえる。
その日は見たこともないほど月が大きく見えた。
月の色は常に見る淡い黄色ではなく、柘榴を思わせるほど鮮やかな朱色だった。
村の者は皆それにおそれを抱き早々と自分の家に戻って行くが身よりのない私たちは丘の下でその月を見ていた。
「ねぇ、サラ・・・
今日の月は凄く綺麗ね」
親友のリンは月を見てそういった。
確かに常にない色ではあるが月はいつもの通り私たち二人を照らしている。
身よりのない私たちには月がいつも明かりの代わりだった。
けど、リンの表情はどこか安定さを欠けていた。
月の光に魅せられたかのように。
「そうね。
でも、少し怖い・・・」
リンは私を見て微笑む。
優しさをたたえたその笑みが私は好きだった。
「大丈夫。
私が側にいるよ」
繋いでいた手をぎゅっと握りしめられる。
伝わる暖かさが好きだった。
二人で入ればどんな事も乗り越えられる。
そう信じられた。
その瞬間まで。
「よー、サラ達。
お前らこんな所にいたのかよ」
振り向くと数人の若者が私たちを囲んでいた。
身よりのない私たちを村は当然歓迎してはくれない。
けれど邪険にすることも出来ず、ただ遠巻きに見ている連中はまだ良い。
こうやって私たちが無力な女だということに味を占めた者も多くいる。
何度そういう危機を切り抜けただろう。
だが、今夜はそれをいさめてくれるはずの村の者達は自分の家にこもってしまっている。
「いいかげん、俺達に良い夢見させてくれよ」
「なぁ、リン」
伸びてくる手。
舐めるように這う視線。
あざ笑う声。
私たちは走った。
無我夢中で走った。
それがいけなかった。
いつのまにか私たちは後のない崖の下へ追い込まれてしまった。
「もう、逃げ場は無いぜ」
「さーて。どちらから頂こうか」
「均等にあげないと不公平だしな」
リンは私を庇い前へ出る。
「サラには指一本触るんじゃないわよ」
温かい背中。
でも、守られてはいけない。
「へー。リンが相手してくれるのか」
「お前良い身体してるし。
かまわねえぜ」
「いっそうのこと、全員面倒みてもらおうか」
「賛成!!」
リンは一歩も引かない。
「止めて!!リンには手を出さないで」
リンの前に出る。
怖くない、怖くない、だって私の後ろにはリンがいる。
「サラ!?」
大丈夫、心配しないで。
私は貴女を守りたいの、だから。
「私が私が・・・相手をするわ」
怯えない、こんなやつらに。
「サラ、やめっ・・・て」
-ドン
男の一人がリンに当て身を食らわした。
伸ばされた手は空を切る。
「じゃ、楽しもうぜ」
着ていた服は伸びてくる無数の手が破り捨てる。
下品た笑い声。
私の反応をみて面白がる男達。
「キャァーーー!!!!!」
叫ぶ声も楽しいのか。
何度も何度も私の身体は弄ばれる。
意識が何度飛んだだろう。
でも、男達は言う。
「お前が眠ったら、リンの番だな」
「そうそう。反応の無くなった玩具は楽しくないから」
「せいぜい楽しませてくれよ」
言葉に浮上する意識。
リン。
リン。
貴女はどうかそのまま眠っていて。
願いは届かない。
男の一人がリンを起こす。
「おい、見ろよ。
お前の親友がどうなってるのか」
「・・・さ・・ら・・」
「イヤァァァァァ!!!!!!!」
何度目の叫びだっただろう。
リンの目の前で私の身体はひらかれて。
閉じることを忘れたリンの瞳から正気の色は失せ。
男達は自分たちの気が済むと興味を失ったのかリンには手を出さず去っていった。
「リン・・・」
ぼんやりと焦点のおぼつかないリンは私を見ると言った。
「守りたかったのに」
「リン」
「守りたかったのに」
「リン、もう良いの」
「私、守れなかったの?」
「リン・・・」
虚空を見上げるリンの瞳に月が映っていた。
私たちは互いを抱きしめるように眠った。
その夜更け。
村から火の手が上がった。
炎は勢いよく村の民家を燃やした。
犠牲者はあの男達だった。
次の日。
村の長から私たちは呼び出された。
「昨夜、若者数名が火事の犠牲になった。
その火付けをしたのがリンだと言う者がおる。
心当たりあるか?」
その顔ははっきりとリンを疑っていた。
「違います!!
昨日私たちはずっと一緒にいました」
「いいえ。私たちは一緒にいませんでした」
リンの顔は作り物のようだった。
「犯人は自分だと言うのか?」
「憎しみで人が殺せれば、そうですね」
リンの顔に笑みが浮かぶ。
その笑みは恐ろしいほど綺麗だった。
結局、村の長は私たちを無罪とした。
火付けの証拠が何もない私たちを罪人とするわけにもいかなかっのだろう。
しかし、村人はそうは思っていない。
火付けの犯人はリンだ。
日増しにリンへの村人の嫌がらせはエスカレートする。
村を歩けば視線を避けられ、罵声を浴びせられ、石を投げられる。
繰り返し繰り返し行われる。
けれどリンはただ黙って受けていた。
そんな時のリンの表情はまるで人形のようだった。
ある時、リンへ向けられた石がサラにぶつかる。
「サラ!!」
表情を変えないリンが駆け寄る。
それが合図だった。
何をしても無反応なリンが唯一反応する者。
皆は一斉にサラを狙い始めた。
「痛い、リン逃げて」
「サラ!!」
その痛みをいつかのように受けるサラ。
リンの瞳にあの日の月が映る。
サラが暴行を受けて以来、サラとリンは互いを抱き合うように眠っていた。
サラはその日もリンと一緒に眠った。
けど、夜更けに目を覚ますと傍らにいたリンの姿は無かった。
「リン、どこ?」
ふわふわと夢遊病者のようにサラは歩く。
リンを求めて。
麓の村は赤々と明るい。
「火事!!リンリンどこにいるの?」
巻き込まれたかもしれないリン。
探さなきゃ、どこかで傷ついて動けないのかもしれない。
村は静かだった。
火事は村全体を飲み込んでいる。
なのに、村人は一人も見あたらない。
下を見る。
炎を映した地面は赤い。
-ゴロゴロゴロ
足下へ転がってくる音。
下を向く。
空洞の瞳がこちらを見ている。
「イヤァァァァァ、リン!!!!!」
「大丈夫。
それは私ではないわ」
静かな声が私の耳に触れる。
瞼を覆い隠す手。
閉じられた視界の向こうで鮮血が飛ぶ。
二人で見た。
赤い月の嗤い声。
今はっきりと聞こえた気がした。
それはあまりに突然だった。
ずっとずっと昔から隣で笑っていた親友の手が私を捕らえる。
"ずっとずっとこうしたかった"
その日は見たこともないほど月が大きく見えた。
月の色は常に見る淡い黄色ではなく、柘榴を思わせるほど鮮やかな朱色だった。
村の者は皆それにおそれを抱き早々と自分の家に戻って行くが身よりのない私たちは丘の下でその月を見ていた。
「ねぇ、サラ・・・
今日の月は凄く綺麗ね」
親友のリンは月を見てそういった。
確かに常にない色ではあるが月はいつもの通り私たち二人を照らしている。
身よりのない私たちには月がいつも明かりの代わりだった。
けど、リンの表情はどこか安定さを欠けていた。
月の光に魅せられたかのように。
「そうね。
でも、少し怖い・・・」
リンは私を見て微笑む。
優しさをたたえたその笑みが私は好きだった。
「大丈夫。
私が側にいるよ」
繋いでいた手をぎゅっと握りしめられる。
伝わる暖かさが好きだった。
二人で入ればどんな事も乗り越えられる。
そう信じられた。
その瞬間まで。
「よー、サラ達。
お前らこんな所にいたのかよ」
振り向くと数人の若者が私たちを囲んでいた。
身よりのない私たちを村は当然歓迎してはくれない。
けれど邪険にすることも出来ず、ただ遠巻きに見ている連中はまだ良い。
こうやって私たちが無力な女だということに味を占めた者も多くいる。
何度そういう危機を切り抜けただろう。
だが、今夜はそれをいさめてくれるはずの村の者達は自分の家にこもってしまっている。
「いいかげん、俺達に良い夢見させてくれよ」
「なぁ、リン」
伸びてくる手。
舐めるように這う視線。
あざ笑う声。
私たちは走った。
無我夢中で走った。
それがいけなかった。
いつのまにか私たちは後のない崖の下へ追い込まれてしまった。
「もう、逃げ場は無いぜ」
「さーて。どちらから頂こうか」
「均等にあげないと不公平だしな」
リンは私を庇い前へ出る。
「サラには指一本触るんじゃないわよ」
温かい背中。
でも、守られてはいけない。
「へー。リンが相手してくれるのか」
「お前良い身体してるし。
かまわねえぜ」
「いっそうのこと、全員面倒みてもらおうか」
「賛成!!」
リンは一歩も引かない。
「止めて!!リンには手を出さないで」
リンの前に出る。
怖くない、怖くない、だって私の後ろにはリンがいる。
「サラ!?」
大丈夫、心配しないで。
私は貴女を守りたいの、だから。
「私が私が・・・相手をするわ」
怯えない、こんなやつらに。
「サラ、やめっ・・・て」
-ドン
男の一人がリンに当て身を食らわした。
伸ばされた手は空を切る。
「じゃ、楽しもうぜ」
着ていた服は伸びてくる無数の手が破り捨てる。
下品た笑い声。
私の反応をみて面白がる男達。
「キャァーーー!!!!!」
叫ぶ声も楽しいのか。
何度も何度も私の身体は弄ばれる。
意識が何度飛んだだろう。
でも、男達は言う。
「お前が眠ったら、リンの番だな」
「そうそう。反応の無くなった玩具は楽しくないから」
「せいぜい楽しませてくれよ」
言葉に浮上する意識。
リン。
リン。
貴女はどうかそのまま眠っていて。
願いは届かない。
男の一人がリンを起こす。
「おい、見ろよ。
お前の親友がどうなってるのか」
「・・・さ・・ら・・」
「イヤァァァァァ!!!!!!!」
何度目の叫びだっただろう。
リンの目の前で私の身体はひらかれて。
閉じることを忘れたリンの瞳から正気の色は失せ。
男達は自分たちの気が済むと興味を失ったのかリンには手を出さず去っていった。
「リン・・・」
ぼんやりと焦点のおぼつかないリンは私を見ると言った。
「守りたかったのに」
「リン」
「守りたかったのに」
「リン、もう良いの」
「私、守れなかったの?」
「リン・・・」
虚空を見上げるリンの瞳に月が映っていた。
私たちは互いを抱きしめるように眠った。
その夜更け。
村から火の手が上がった。
炎は勢いよく村の民家を燃やした。
犠牲者はあの男達だった。
次の日。
村の長から私たちは呼び出された。
「昨夜、若者数名が火事の犠牲になった。
その火付けをしたのがリンだと言う者がおる。
心当たりあるか?」
その顔ははっきりとリンを疑っていた。
「違います!!
昨日私たちはずっと一緒にいました」
「いいえ。私たちは一緒にいませんでした」
リンの顔は作り物のようだった。
「犯人は自分だと言うのか?」
「憎しみで人が殺せれば、そうですね」
リンの顔に笑みが浮かぶ。
その笑みは恐ろしいほど綺麗だった。
結局、村の長は私たちを無罪とした。
火付けの証拠が何もない私たちを罪人とするわけにもいかなかっのだろう。
しかし、村人はそうは思っていない。
火付けの犯人はリンだ。
日増しにリンへの村人の嫌がらせはエスカレートする。
村を歩けば視線を避けられ、罵声を浴びせられ、石を投げられる。
繰り返し繰り返し行われる。
けれどリンはただ黙って受けていた。
そんな時のリンの表情はまるで人形のようだった。
ある時、リンへ向けられた石がサラにぶつかる。
「サラ!!」
表情を変えないリンが駆け寄る。
それが合図だった。
何をしても無反応なリンが唯一反応する者。
皆は一斉にサラを狙い始めた。
「痛い、リン逃げて」
「サラ!!」
その痛みをいつかのように受けるサラ。
リンの瞳にあの日の月が映る。
サラが暴行を受けて以来、サラとリンは互いを抱き合うように眠っていた。
サラはその日もリンと一緒に眠った。
けど、夜更けに目を覚ますと傍らにいたリンの姿は無かった。
「リン、どこ?」
ふわふわと夢遊病者のようにサラは歩く。
リンを求めて。
麓の村は赤々と明るい。
「火事!!リンリンどこにいるの?」
巻き込まれたかもしれないリン。
探さなきゃ、どこかで傷ついて動けないのかもしれない。
村は静かだった。
火事は村全体を飲み込んでいる。
なのに、村人は一人も見あたらない。
下を見る。
炎を映した地面は赤い。
この液体は何?
この臭いは何?
この肉塊は何?
この臭いは何?
この肉塊は何?
-ゴロゴロゴロ
足下へ転がってくる音。
下を向く。
空洞の瞳がこちらを見ている。
「イヤァァァァァ、リン!!!!!」
「大丈夫。
それは私ではないわ」
静かな声が私の耳に触れる。
瞼を覆い隠す手。
閉じられた視界の向こうで鮮血が飛ぶ。
二人で見た。
赤い月の嗤い声。
今はっきりと聞こえた気がした。
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